著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大准教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部准教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

レンジャーズが本拠地を満員にした裏に州知事の計算

公開日: 更新日:

 テキサス州民が雇用の機会を奪われ、小規模事業者が経費の支払いに苦慮する状況を克服するというのが、アボットの主張だ。また、予防接種の件数の増加や新型コロナウイルス感染症の治療法の改善なども、解除措置の根拠として挙げられている。こうした点からは、アボットが経済活動を優先していることがうかがわれる。

 さらに、アボットが22年の州知事選に出馬する計画であることも状況を複雑にしている。すなわち、アボットは「コロナ禍を乗り切った州知事」として選挙に臨み、再選を目指している。大規模な催事での入場制限や外出時のマスクの着用義務などを撤廃することは、象徴的な施策だったのである。

■大統領に「無責任」と非難されても

 大統領のジョー・バイデンが「無責任な行為」と非難しても、アボットは一向に意に介さない。レンジャーズとともにテキサス州に所在するアストロズの場合も4月8日の本拠地での開幕戦の観客が定員の50%を超える2万1765人となっており、州知事の政策に沿った行動を取っている。

 観客数の制限の撤廃は、観客の集団感染の発生という危険性は排除できないものの、球団側にとっては売り上げの確保という点で望ましい。その意味で、今回の措置は球団には利益をもたらし、アボットには強い指導者という印象を有権者に与える、双方の利害が一致するものだったのである。

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