レンジャーズが本拠地を満員にした裏に州知事の計算
テキサス州民が雇用の機会を奪われ、小規模事業者が経費の支払いに苦慮する状況を克服するというのが、アボットの主張だ。また、予防接種の件数の増加や新型コロナウイルス感染症の治療法の改善なども、解除措置の根拠として挙げられている。こうした点からは、アボットが経済活動を優先していることがうかがわれる。
さらに、アボットが22年の州知事選に出馬する計画であることも状況を複雑にしている。すなわち、アボットは「コロナ禍を乗り切った州知事」として選挙に臨み、再選を目指している。大規模な催事での入場制限や外出時のマスクの着用義務などを撤廃することは、象徴的な施策だったのである。
■大統領に「無責任」と非難されても
大統領のジョー・バイデンが「無責任な行為」と非難しても、アボットは一向に意に介さない。レンジャーズとともにテキサス州に所在するアストロズの場合も4月8日の本拠地での開幕戦の観客が定員の50%を超える2万1765人となっており、州知事の政策に沿った行動を取っている。
観客数の制限の撤廃は、観客の集団感染の発生という危険性は排除できないものの、球団側にとっては売り上げの確保という点で望ましい。その意味で、今回の措置は球団には利益をもたらし、アボットには強い指導者という印象を有権者に与える、双方の利害が一致するものだったのである。