MLB球宴「ヘイトクライム」で日本人選手大挙選出の可能性
同じ日に日本を含むアジア出身の4人がメジャーの先発マウンドに上がった。
日本時間6日にマリナーズ・菊池雄星(29)がオリオールズ戦に登板。7回を5安打3失点。先発として最低限の役割をこなしたが、打線は相手先発左腕ミーンズに無安打無得点を許して菊池に2敗目(1勝)がついた。
パドレス・ダルビッシュ有(34)は4勝目(1敗)をかけてパイレーツ戦、エンゼルス・大谷翔平(26)は2勝目(0敗)をかけてレイズ戦にそれぞれ登板。この日は、同じアジアで韓国出身の左腕カージナルス・金廣鉉(32)がメッツとのダブルヘッダー第1試合に先発し、4回を2安打1失点だった。
今季のメジャーの開幕ロースターには日本(8人)、韓国(4人)、台湾(1人)出身の計13人が名を連ねた。
昨季、レイズのワールドシリーズ進出に貢献した韓国人スラッガーの崔志萬内野手(29)は右膝手術で開幕を負傷者リスト(IL)で迎えたものの今季は開幕からアジア人選手の活躍が目立つ。
メジャー2位タイの9本塁打を放っている大谷の他、ブルージェイズの韓国人左腕・柳賢振(34)は5試合で1勝2敗ながら、防御率2.60と安定した投球。レッドソックス・澤村拓一(33=11試合で1勝0敗、防御率3.65)、レンジャーズの韓国人左腕、梁玹種(33=2試合で防御率2.08)の新人2人は中継ぎでまずまずの働きぶりだ。
今月下旬にはオールスター(7月14日=コロラド州デンバー)のファン投票が開始される。今後もアジア出身の各選手が順調に成績を伸ばせば、ミッドサマー・クラシックといわれる真夏の祭典の出場選手に日本や韓国出身の選手が大挙して名を連ねる可能性がある。
現在、米国内で暗い影を落としているアジア人差別、ヘイトクライムが追い風となり、アジア出身選手が優先的に選出されても不思議ではないからだ。
■アトランタからデンバーに
大リーグ機構(MLB)では長らく、人種差別撤廃を唱えてきた。今年の球宴は当初、ジョージア州アトランタの開催を予定していたが、同州で不在者投票の身分証明を厳格化するなどマイノリティー(人種的少数派)をターゲットにしたとされる制限法が成立。ナ・リーグの指揮を執るドジャースのデーブ・ロバーツ監督が辞退を申し出るなど、球界内から激しい反発の声が上がったこともあり、ロブ・マンフレッド・コミッショナーは4月に「全ての米国人の投票権を支持し、投票への制限に反対する」と声明を発表、開催地をデンバーに変更した。
MLB推薦に変更
球宴の出場選手は、打者はファン投票によって選出されるが、投手は2017年に従来の監督推薦が廃止、大リーグ機構の推薦に変更された。ファンの意向とは関係なく、大リーグ機構のさじ加減で選出されるため、アジア出身の選手が優遇される余地が出てきたのだ。
「もちろん、出場選手が発表される7月上旬時点での成績が最優先されるのは当然ですが」と野球文化学会会長で、名城大准教授・鈴村裕輔氏がこう続ける。
■差別的言動に断固たる措置
「MLBがアジア人だからといって無条件で選ぶことはないでしょう。ただ、同程度の成績であればアジア人を優先的に選ぶ可能性は十分にあります。MLBはマイノリティー対策に熱心に取り組んでおり、差別的な言動に対しては断固たる措置を取っています。今回、球宴の開催地を変更したようにアジア人ヘイトについても見過ごすはずがなく、投手はアジア人選手を積極的に推薦することも考えられます。大谷やダル、前田(ツインズ)、柳らメジャーでもトップレベルの実力を持つアジア出身の選手はもちろん、彼ら以外のアジア人選手が恩恵を受けたとしても不思議ではありません」
今年の球宴では大谷が二刀流を披露、ダルとマエケンが投げ合うばかりか、今後の成績次第で菊池や沢村までマウンドに立つ可能性も出てきたようだ。