<1>カール・ルイスとの契約放棄は人生最大の判断ミス
アシックスは、ルイスとともにバルセロナ400メートルリレー金のメンバーだった若手スプリンターのリロイ・バレルと契約。91年世界陸上東京大会100メートル決勝で「打倒ルイス」に懸けた。バレルは大会の2カ月前、9秒90の世界新記録を出しており、金メダルの可能性は高い。
祈るようにスタンドで見ていた注目の100メートル決勝。ルイスは9秒86の世界新記録で優勝。9秒88の自己ベスト(当時)を出したバレルは2位に敗れた。国立競技場から世界に発信された「ルイス・ショー」のインパクトは大きかった。市場では「ミズノ」の社名を知らなくても、「ルイスが履いているシューズを下さい」と言われるようになった。「陸上スパイクのミズノ」は、ますます世界に浸透。ルイス効果により、ミズノブランドは他の競技にも波及した。
ルイスを逃したことは人生最大の判断ミスだった。悔やんでも悔やみきれない。その一方で、大物を逃したことで大打撃を避けられたこともある。(※1位のB・ジョンソンが88年ソウル五輪のドーピング違反でルイスが金3つになる)(つづく)