住職に転身した元プロ野球審判 佐々木昌信さんが語る大谷翔平と松井秀喜の共通点
佐々木昌信さん(「ゲッツポーズ」で人気を博した元プロ野球審判/52歳)
昨年11月、西武―日本ハム戦を最後に引退した日本野球機構(NPB)の審判員・佐々木昌信さん。現役中は、ストライクのコール時のダンディ坂野の「ゲッツ」に似たポーズが、たびたびスポーツ番組に取り上げられた。また2015年には最優秀審判員賞の栄誉に輝いたものの、18年には誤審騒動が話題になった。さて、今どうしているのか。
◇ ◇ ◇
「大活躍中の大谷翔平選手とヤンキースのGM特別アドバイザーをしている松井秀喜さん。2人には共通点があるんです。これは球審しかわからないことなんですけどね」
こう言うと、佐々木さんはにっこりとほほ笑んだ。
「最初の打席に立つ際、『〇〇さん、こんにちは』、ナイターなら『こんばんは』ですけど、必ず球審の名前をつけて挨拶するんです。家庭環境なのか本人の自覚なのかは知りませんが、球審も人の子、悪い気はしないもの。多分、メジャーでも2人は挨拶してると思いますよ」
群馬県館林市にある真宗大谷派の古刹・覚応寺。昨年11月4日、29年の審判員生活にピリオドを打ち、翌日、340年余りの歴史を誇る同寺の18世(代目)住職に就任した。
「もともと、定年(55歳)になったら継ぐ予定でした。ところが、体調が悪かった父が昨年1月に急に亡くなったため、昨シーズン限り、としたのです。NPBからは“二刀流”でと慰留されましたが、ご法事は週末が多いですし、ご葬儀もいつあるかわかりません。実際、引退した翌日にご葬儀を取り仕切りましたからね」
審判時代は夜型だったが、すっかり朝型。早朝6時から一日が始まる。
「今必死に覚えているのが、境内に400基ほどある檀家さんのお墓の位置です。先代はすべて暗記しており配置図がないんですよ」
頻発する地震で傷んだ山門と土塀の修繕工事にも取り組み、何かと忙しい。
一方、新型コロナの影響は大きい。密を避けるため、法事が減り、家族葬が増えるなど簡素化の流れは寺院経営の大きな痛手だ。
「それと檀家さんが、マスクをされているので顔をなかなか覚えられません。街中ですれ違うと、先方は僕の丸刈り頭でわかるのですが、僕は気づかないまま失礼していると思います。本当に厄介な時代です」