エンゼルス大谷翔平 初の本塁打王に「3つの敵」…ゲレロJr.が45号ソロで単独首位に
「審判のジャッジに対して、露骨に不満げな態度をとったり、嫌な顔をしたりするのはマイナスでしかありません」
こう言うのはメジャーに詳しいスポーツライターの友成那智氏。審判の判定に対して、それは違うだろうと言わんばかりに手を振ったり、不服な苦笑いをしたりするケースが目立つ大谷翔平(27=エンゼルス)に関してだ。
「投手では有利な判定が多い気がしますが、打者になると逆。ボール球1個分外れていてもストライクとコールされることすらある。アメリカのテレビはストライクゾーンを重ね、解説者が明らかなボールだとハッキリ言うほど。大谷の打席で本人に不利なジャッジが多いのは事実です。最近は減りましたけど、メジャーの審判の判定に対して不満をあらわにすれば、これまで以上にジャッジは厳しくなります。審判の判定に逆らうような言動は慎んだ方がいい」(友成氏)
日本時間13日、大谷はブルージェイズのゲレロJr.(22)に44号本塁打で並ばれ、6月29日から死守してきたメジャー単独トップの座を明け渡した。さらにゲレロJr.は同14日のレイズ戦で45号を放ち、大谷を抜き去った。ロイヤルズのペレス(31)も42号で迫っている。
3チームとも、残りは20試合を切っている。ア・リーグ本塁打王の行方はいよいよ混沌としてきたが、判定に異を唱えるようなしぐさやジェスチャーはタイトルを争ううえでマイナス。審判を敵に回すことになりかねないというのだ。
今後の対戦相手も難敵が多い。
エンゼルスは15日から敵地でホワイトソックス3連戦、その後はホームでアスレチックス3連戦、アストロズ4連戦、マリナーズ3連戦、敵地でレンジャーズ3連戦、マリナーズ3連戦と続く。
中でも最初の10試合で対戦する3球団は、いずれも強豪だ。ホワイトソックスが中地区首位なら、アストロズは西地区首位。アスレチックスは現在、ワイルドカードによるプレーオフ進出をかけてブルージェイズ、レッドソックス、ヤンキースと熾烈な争いを繰り広げている。
アストロズのチーム防御率3.72はリーグトップ。ホワイトソックスの3.78は4位。アスレチックスの3.92は6位。どのチームも投手陣が強力なうえ、プレーオフに向けて一戦必勝で臨んでくるだけに、やすやすと一発を量産できるとは思えないのだ。
「最近の大谷は打つときに体の開きが早いせいなのか、左腕より右腕を苦にしがちです。特にチェンジアップやカーブのキレがよく、速球の制球を間違えない右投手に手を焼いている。ホワイトソックス、アストロズ、アスレチックスは、そういったタイプの右腕が豊富ですからね」(前出の友成氏)
大谷は開幕から投打とも全開「バテて当然」
自身の疲労もある。大谷は球宴を境に本塁打のペースがガクンと落ちた。前半戦の打率.279、33本に対し、後半戦は.224、11本。9月は2本にとどまっている。9月に入って6本と調子上向きのゲレロとは対照的で、大谷は明らかに下降線をたどっている。
「疲れですよ。大谷は通常、投手としての調整をしながら、打者としての練習も欠かさない。単純に他の選手の倍の練習量をこなして、なおかつ昨年まで免除されていた登板日前後も野手として試合に出続けています。昨季まで投手としても野手としても突出した成績を残せなかっただけに、今季も似たような成績なら投手か野手、どちらかに絞らなければならない可能性もあった。今季は開幕から投打ともフルスロットル、エンジン全開でプレーしているだけにバテて当然です」(現地特派員)
マドン監督は、大谷がメジャー自己最多の117球を投げて9勝目を挙げた翌日の試合(5日)で43号本塁打を打ったことを受けて、「きょうは非常に良いスイングをしていると思ったが、あれだけ投げた後だけに体のどこかが痛いはず」と言った。登板翌日に打席に立つ負担がいかに大きいかを物語る発言だ。「けれども彼は私にそのことをまったくほのめかさなかった」と続けたものの、すでに青息吐息になっていたとしても不思議ではない。
大谷は今後も審判、相手投手、そして自身の疲労とも闘わなければならないのだ。