ドラフト1位候補・高校生右腕5人の「武器と弱み」人気No.1は小園健太(市和歌山)か
小園健太(市和歌山/和歌山)
甲子園出場は今春のセンバツ1度だけだが、最速152キロの直球と多彩な変化球を操る。「他の高校生1位候補と比べて小園は変化球の精度が高い」と某スカウトがこう続ける。
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「腕の振りが良くてスライダー、カットボール、ツーシーム、チェンジアップといった変化球のキレ、コントロールが抜群。カウントが悪くても投げ込めるのは強みです」
一方で「大きな課題は見当たらないが、変化球でいつでもストライクが取れる器用さがあるだけに、何年もプロにいるような投手のように小手先に頼るところがある。せっかくいい直球があるのだから、これからさらに投手の原点であるアウトコースのストレートを磨いて欲しい」と指摘する。
8日に巨人とオリックス、10日にソフトバンクとの面談に臨み、「(ソフトバンクは)凄く好きな球団。育成力が素晴らしくて、チーム全体に活気がある」と言った。前出のスカウトは「全体の完成度が高いので、早い段階でのローテーション入りが期待できる。高校生の中では即戦力に近い投手で、将来のエースになり得る素材。ドラフトまで1カ月を切り、公式戦で状態を上げてくるかもしれない大学、社会人の候補次第ではあるが、現状では全体の1番人気になる可能性があります」と評価する。
森木大智(高知/高知)
「他のドラフト上位候補と比べても、頭ひとつ抜けた存在じゃないか。持ち味は右打者の外角低めにきっちりコントロールされるストレート。スライダーやスプリットなど、変化球のキレも申し分ない」
7月3日、大阪桐蔭との練習試合で7回を投げて11奪三振。ネット裏で森木を見たスカウトはこう言って舌を巻いた。
高知中時代に軟式で150キロをマーク。高校進学時から全国で知られた存在だったものの、5回チャンスがあって一度も甲子園の土を踏めなかった。
「県内に明徳義塾という高い壁があったことが原因のように言われていますけど、森木が順調に育っていれば結果は違ったと思う」と、四国のさるマスコミ関係者がこう続ける。
「卒業後は間違いなくプロに行く存在だからでしょう。周囲がケガや故障を恐れたのか、森木は投げ込みや厳しいトレーニングをほとんどやっていないのです。なので体力もスタミナも不足している。最後の夏の県大会決勝の明徳義塾戦では準決勝から中1日ありながら、九回途中まで124球を投げて握力がなくなったと聞きました。明徳の馬淵監督も、森木は9回を投げ切る体力がないとハッキリ言っていましたからね」
素材はピカイチ。大阪桐蔭からバタバタと三振を奪ったようにポテンシャルは高いものの、「スタミナや体力は高校生の平均以下」(前出の関係者)というのだ。
達孝太(天理/奈良)
ポテンシャルの高さで言えば、高校生屈指といっていい。
最速148キロのストレートを誇る193センチの長身右腕は、夏こそ甲子園出場はかなわなかったが、ベスト4になった春は、長い腕と可動域の広さを存分に生かしつつ、低めにボールを集める制球力の高さも兼ね備えている。
将来的なメジャー挑戦も見据えるが、春に3試合計459球を投げた反動で、大会後は左脇腹痛、右肘炎症に見舞われ、6月まで別メニュー調整をしてきた。
「将来性を買えるか買えないかという判断になる。0で終わるか、100以上に化けるかという側面がありますから」とは、セ球団のスカウトだ。
「193センチ、85キロの体は成長過程。春に投げた反動が出るのは致し方ない部分があるが、プロ入りしてからしばらくの間はケガのリスクがつきまとう。2019年ドラフトの際の佐々木朗希(大船渡→ロッテ)のように、体づくりからじっくり時間をかけて育てていかないといけない。現時点では佐々木朗ほどボールに強さがあるわけではないから、大成するにはより多くの時間がかかるでしょう。即戦力が欲しい球団や、育成に時間がかけられない球団はまず、手を引くでしょうね」
佐々木朗はプロ2年目の今季、ようやく大器の片鱗を見せつつあるが、達はさらにじっくりと磨いていく必要があるだけに、評価が分かれそうだ。
畔柳亨丞(中京大中京/愛知)
春のセンバツでベスト4入りした最速152キロ右腕は、夏の愛知県大会準決勝・愛工大名電戦に先発したが序盤から制球が定まらない。なんとこの試合だけで7四死球。最速148キロの球威のあるボールで押して8回5安打3失点と被害を最小限に抑えたものの、味方の援護も1点止まりで甲子園の切符を逃した。
ドラ1候補の乱調に、スカウトの間では「イップスではないか」とのウワサも出ている。
「畔柳は体重移動やヒジの使い方など、そうした細かい技術にこだわらない馬力型の投手です。こうした感覚派のタイプは何かひとつ歯車が狂うと、立て直すのが難しい。畔柳もまだ改善の様子はありませんね。ただ、逆にふとしたきっかけで復活することもある。イップスと呼べるほどの重症なのか、それとも大したことがないのか。それ次第でドラフトの順位も変わりそうです」
とは、パ球団スカウトだ。
風間球打(明桜/秋田)
最速157キロ。今夏、「大会ナンバーワン投手」の看板を引っ提げて初めて甲子園の土を踏んだ。
「183センチの割に腕が長く、投げる球に角度がある。打者にとって実際の球速よりも速く見えるはず。フィジカルの強さも感じる」「変化球の投げ分けもうまい。カウントを取る時と、空振りを取りにいく時で、手首の角度を微妙に変えて球速を調整する器用さがある」「向上心が強いから、プロの環境に身を置けばさらに伸びる。素材型として楽しみな投手」と、ネット裏のスカウトたちは太鼓判を押し、「ドラフト1位候補」と口を揃えた。
それでも「リリースポイントがバラつくため制球がいまひとつ」だそうだから、あくまでも「素材型」か。