羽生結弦SP8位出遅れは準備不足もアダ…チェンや宇野は団体戦での本番リンク経験が吉に
4回転半ジャンプ成功と3連覇を目指す王者に思わぬ「落とし穴」が待っていた。
8日のフィギュアスケート男子ショートプログラム(SP)。金メダル候補の羽生結弦(27)は冒頭の4回転サルコーの踏み出しの際、リンクのくぼみにエッジを取られて力が伝わらず失敗。ジャッジに1回転と判定され、得点が伸びず、95.15点とトップスケーターにしては平凡な得点に終わった。
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まさかのハプニングに足をすくわれた羽生とは対照的にライバルたちは安定した演技を披露。宿敵ネーサン・チェン(22)が世界最高得点の113.97点で首位発進。初出場の鍵山優真(18)は108.12点、平昌銀メダルの宇野昌磨(24)は105.90点で、ともに自己ベストをマークし、それぞれ2、3位につけた。羽生は最後に滑走したかつてのライバルであるジェーソン・ブラウン(27=97.24点)にも及ばず、結局8位と大きく出遅れた。
4回転サルコーの失敗について羽生は「なんか穴に乗っかりました」とリンクが削られてできた溝にはまったと説明。
2019年3月の世界選手権(さいたま市)のSPでも同様のミスがあって今回の6分間練習では十分に注意していたそうだが、「本番の時に完璧なフォームで完璧なタイミングで行ったら、跳んだ瞬間にもう穴に入っていて。もうしょうがないです」と苦笑い。最後は「コンディションは良く、氷との相性もいい。フリーに向けて一生懸命やりたい」と10日の勝負を見据えた。
4回転半にこだわり過ぎた
羽生は17年世界選手権でSP5位から10.66点差を逆転したことがあるが、今回のチェンとの差は18.82点。現実的に金メダル争いから脱落。3連覇達成は厳しい状況に追い込まれながらフリーでクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)に挑むことになったが、不安は尽きない。
今季は右足首靱帯を痛めて出場を予定していたGPシリーズ2大会(NHK杯、ロシア杯)を欠場。全日本選手権に出場しただけで、実戦不足のまま五輪本番を迎えた。
今大会に向けた準備不足は明らかだ。今月2日に宇野、坂本花織(21)らが早々に北京入りする中、羽生は国内で単独調整を続けた。現地入りしたのはSP2日前の6日だった。国内外のトップスケーターが会場の首都体育館のリンクで入念に氷の感触を確かめたのとは対照的に、本番リンクでの調整不足を不安視する声が出ていた。
足首の状態が思わしくないとはいえ、羽生にとっては団体戦を回避したことも致命的だった。前回の雪辱を期すチェンは団体戦のSPに出場して実戦を通じてウオーミングアップを図った。この日の演技を終えた団体SP2位の宇野は「間違いなく団体戦が生きた個人戦のSPだったと思う」と振り返っている。
羽生は4回転半にこだわり過ぎたあまり、3度目となる五輪でピーキングに失敗したようだ。