学校給食センターで学んだ「組織論」 新たな視点でサッカーを見直すきっかけに
サポーター目線で努力することの大切さ
「Jリーグのいろいろな試合を一人の観客(ファン・サポーター)としてスタンドから<良い意味で距離を置いて>見ることができ、サッカー人として貴重な経験となりました。たとえば鹿島の試合を見るのにチームに連絡すれば、OBとして観戦パスを都合していいただくことも出来たでしょうが、自分でチケットを予約してスタンドからサポーターと一緒に見るべき、と思いました」
「また川崎フロンターレの試合を観戦する時は、鹿嶋市から高速バスに乗って東京駅まで行き、そこから電車を乗り継ぎながら等々力競技場まで行きました。サポーターの皆さんが、試合観戦日にスタジアムまでどんな気持ちで移動しているのか、スタジアムに到着してキックオフまでの時間をどう過ごしているのか、そういったことを実体験することが、同じ目線に立って理解しようと努力することが、今後の指導者人生にとって大切なことだと痛感しました」
■父と祖母の死に目に立ち会えた
「親孝行も出来ました。給食センター勤務中に父と祖母を亡くしました。Jリーグの監督をやっていたら(死に目に)立ち会えないこともありますし、今みたいに海外で働いていたら、たとえコロナ禍じゃなくても葬儀もままならなかったかも知れません。父と祖母をちゃんと見送り、心置きなく供養も済ませ、お墓も新しくしました。地元で働いていて本当に良かった、ありがたいことだと心底思いました」
給食センターで働きながら、指導者としての自分に向き合う時間にも恵まれた。休日には鹿島、大宮監督時代のトレーニングメニューを見ながら「こういうことをやっていたんだな」と振り返る時間もあったという。
「月に一回程度、週末に講演やサッカー教室もやっていたのですが、小学生の子供たちへの指導の大切さ、育成の難しさを実感しました。カシマスタジアムで試合を見ながら『もう一度ピッチの上に立ちたい』という気持ちも沸き上がっていきました。欧州サッカーにも刺激を受けました」