学校給食センターで学んだ「組織論」 新たな視点でサッカーを見直すきっかけに
石井正忠は2019年、一転して監督業とは大きくかけ離れたところに身を置いた。茨城・鹿嶋市の学校給食センターだ。
「現役を引退してすぐに指導者の道を選んだので週末など家族とゆったりと過ごす時間が、ほとんどありませんでした。娘が小学校を卒業する前だったのですが、中学に入学すれば部活や友人たちとの時間が増え、父親と娘というのは自然と距離ができてしまうもの。そうなる前に家族との時間を大事にしたいと思っていたところ、新聞のチラシで給食センターの職員募集を見つけました」
「土日は休めるし、有り難いことに夏休みもある。あの頃、将来的に<鹿嶋市内に大人も子供も伸び伸びと運動できるような場所を作りたい>という構想を温めていましたし、地元の給食センターで働くことが、あの時点ではベストと思いました。新しい挑戦でドキドキ、ワクワクしてみたいという思いもありました。もちろん履歴書を出して面接も受けましたよ。鹿島の選手、鹿島や大宮の監督と書きました。驚かれたと思います」
■カレー用のジャガイモ200キロを調理
給食センターに入社したばかりの男性社員として調理を担当することもあった。カレー用のジャガイモ200キロを調理用機械に入れる作業を従事したり、パート従業員と連係しながら調理作業を進めたり、身を粉にしながら働いた。
「多くの気付きがありました。とにかく衛生面に気を付けることがもの凄く徹底され、これだけやれば異物の混入なんてあり得ない、と実感させられるほどでした。サッカーの指導者として生かせることもありました。とても有能な女性リーダーがいらっしゃり、自ら率先して手本をみせることもあれば、小さなグループを作ってそれぞれにリーダーを配して全体を上手くコントロールしたり、給食センターで働きながら<組織論>を学ばせていただきました」
学校給食センターの1年間は、それまでとは違う角度からサッカーを見つめ直すことができた。