王手をかけた98年日本シリーズ第6戦 マウンドに向かう途中で「10.19」リリーフがよぎった
マウンドに向かうリリーフカーに乗りながら頭をよぎったのは近鉄時代の88年10月19日、川崎球場で行われたロッテとのダブルヘッダー、俗に言う「10.19」の2試合目のリリーフ登板だった。
■スクリューボールを左翼席へ
ちょうど10年前。1点リードの八回からマウンドに登り、2イニングを抑えれば優勝に手が届いた。しかし1死後、私はストレートのサインにクビを振って投じたスクリューボールを高沢秀昭さんに左翼スタンドに運ばれ、近鉄は優勝を逃したのだ。
高沢さんがそれまでスクリューボールを2度続けて空振りしたこと、疲労からストレートにいつものようなキレがないと思ったこと、狭い川崎球場で甘いコースに入った場合にスタンドに運ばれる確率はスクリューボールの方が低いと思ったこと……ストレートのサインにクビを振った根拠はあったものの、気持ちが守りに入っていたのは事実だ。
その翌年、リーグ優勝を決めたダイエー戦で七回途中からリリーフ。最後の打者に対して9球すべてストレートを投げ続けたときのように、強い気持ちで攻め続けよう。