怪物はもう出ない…佐々木朗希の登板回避問題が変えたもの「甲子園と令和の怪物」著者が語る
甲子園で行われている第104回全国高等学校野球選手権大会。甲子園の歴史は「怪物」の歴史でもあった。江川卓、松坂大輔、田中将大……。彼らは絶対的なエースとしてチームを背負い、球史に名を刻んだ。
しかし、彼らのような怪物が今後出てくることはないという。そのきっかけとなったのが、2019年に起きた佐々木朗希(当時大船渡、現ロッテ)の登板回避問題だ。先日、「甲子園と令和の怪物」(小学館新書)を上梓した、著者の柳川悠二氏に話を聞いた。
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──2019年の夏は佐々木朗希の登板回避問題が社会現象にもなった。
「大船渡高の国保陽平監督(当時)が岩手大会の決勝戦、『故障を防ぐため』という理由で佐々木を投げさせなかったという判断については、異論はありません。ただ、議論の余地が生まれてしまったのも確かです」
──当時は「決勝戦から逆算して起用すべきだった」など、さまざまな意見があった。
「4回戦で194球を投げ、準決勝では129球の完封勝利。その翌日が決勝戦でした。例えば明徳義塾(高知)の馬淵監督は、以前から『途中で負けるのも決勝で負けるのも一緒』という考えの下、高知大会では決勝戦から逆算して途中までエースを登板させないこともある。ただ、大船渡高校は甲子園強豪校ではなく、しかも公立校。国保監督も経験が豊富なわけではない。そうなると、なかなか先を見据えて逆算……という判断は難しいのではないのでしょうか」
──柳川さんは別の視点から、この登板回避問題を取り上げていました。
「当時、僕が問題視したのは花巻東との決勝戦の先発が5番手投手だった上、その彼を6回9失点まで引っ張ったこと。そして何より、佐々木が先発しないどころか、決勝戦に出場すらさせないという判断を国保監督が事前にナインに詳しく説明しなかったことです。はなから勝負を諦めているような戦い方を疑問視しました」