阪神・今岡打撃コーチが死んでも忘れない岡田監督の教え 2008年「バースデーアーチ」生んだ指導者の矜持
「08年の9月11日、3カ月以上二軍にいた今岡に『すぐ使うぞ』と言って一軍に上げた。ヤクルトの先発が左腕の石川(雅規)で、前日、肘に死球を受けた関本が使えないといった、いくつかの条件が重なったとはいえ、いいタイミングだと思った。この日が今岡の(34歳の)誕生日ということは誰も知らなかった。俺は、同時多発テロが起こった日と同じなので覚えていたのだ。
今岡は1打席目、粘った末に同点2ランを打った。今岡という選手は二軍に置いて調子を見るというタイプではない。気持ちで打つ選手やから、難しい球をホームランすることもあれば、あっさり三振する時もある。この点も野村さんには嫌われていたのではないか」
岡田監督はさらにこう続けた。
「監督ができることは、どうやって気持ちを奮い立たせるかということだけや。ならばそういう場面をつくり出してやればいい。どんな選手にも長所がある。それを引き出したり、伸ばしたりする手助けをするのが指導者ではないだろうか。俺はどんな選手も色眼鏡で見たことはない」