著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大准教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部准教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

同じ薬物問題なのに…米野球殿堂入り ボンズやクレメンスがNGでオルティスがOKのワケ

公開日: 更新日:

 だが、薬物問題そのものだけが絶対的な当落の基準になっているわけではない。ボンズやクレメンスが資格を喪失した22年の投票ではデービッド・オルティスが選出されている。オルティスは薬物の不正使用に対して強く反対する態度を示していたものの、03年の薬物検査で陽性反応が出ていたことが、09年になって報道されたのである。

 ただ、このときは、オルティスが陽性反応が出た事実を認めて謝罪したこと、さらに03年当時は検査体制が完全に確立されておらず、検査そのものの精度も高くなかったことから、選手会も「陽性反応が出たからといって不正薬物を使用しているとは限らない」とオルティスを擁護する態度を示した。

 ボンズの場合も、薬物の不正使用が疑われ始めた当時は規制の対象外であった。従って、オルティスが選ばれたのであれば、シーズンと通算での歴代最多本塁打という傑出した成績を残すボンズが選出されてもおかしくはなかった。

 それでも、「ビッグ・パピ」と呼ばれて誰からも愛されたオルティスと異なり、報道陣や同僚選手との軋轢が絶えず、自己中心的な性格の持ち主とされたボンズの場合は、疑惑にとどまる不正薬物の問題が得票に大きく影響したのだった。

 両者を比べると、BBWAAの有権者と候補者との間の、極めて人間味あふれる一面が明らかとなるのである。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大友康平「HOUND DOG」45周年ライブで観客からヤジ! 同い年の仲良しサザン桑田佳祐と比較されがちなワケ

  2. 2

    阪神・西勇輝いよいよ崖っぷち…ベテランの矜持すら見せられず大炎上に藤川監督は強権発動

  3. 3

    歌手・中孝介が銭湯で「やった」こと…不同意性行容疑で現行犯逮捕

  4. 4

    佐々木朗希の足を引っ張りかねない捕手問題…正妻スミスにはメジャー「ワーストクラス」の数字ずらり

  5. 5

    阪神・藤川監督が酔っぱらって口を衝いた打倒巨人「怪気炎」→掲載自粛要請で幻に

  1. 6

    巨人・小林誠司に“再婚相手”見つかった? 阿部監督が思い描く「田中将大復活」への青写真

  2. 7

    早実初等部が慶応幼稚舎に太刀打ちできない「伝統」以外の決定的な差

  3. 8

    「夢の超特急」計画の裏で住民困惑…愛知県春日井市で田んぼ・池・井戸が突然枯れた!

  4. 9

    フジテレビを救うのは経歴ピカピカの社外取締役ではなく“営業の猛者”と呼ばれる女性プロパーか?

  5. 10

    阪神からの戦力外通告「全内幕」…四方八方から《辞めた方が身のためや》と現役続行を反対された