MGCでパリ五輪代表切符つかんだ一山麻緒を指導 永山忠幸監督「切実な要望」ここが〇と×

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日本陸連にもズバズバ要請

 永山監督のコメントを見た、実業団の元指導者がいう。

「国内のマスコミがマラソン駅伝を批判することは滅多にない。それは陸上に限ったことではないでしょう。サッカーぐらいじゃないですか、厳しい記事を見るのは。実業団の指導者や選手はそれで甘えているわけではありませんが、近年はアフリカ勢の驚異的なスピード化により、五輪のメダルが以前より遠くなった。高橋や野口が全盛の頃は、彼女たちを破らなければ五輪の代表になれなかったので女子全体のレベルがあがった。野口が金を取ったアテネでは土佐(礼子)5位、坂本(直子)も7位入賞です。今は世界と勝負することは頭になく、五輪の代表になることが最大の目標になっているのが現実です」

 それは永山監督も同じだろう。その上で、陸連に対してもこんな要請をした。

「日本陸連の強化の方たちにもお願いしたいのですが、世界で戦うためのトレーニングはどんなことをやっているのか、具体的なものを我々に開示して頂きたい。ナショナルチーム戦略とよく言われるが、全く戦略はない」

 陸連は今年も4月に強化方針を発表した。確かに、中長距離・マラソン担当の高岡寿成シニアディレクターはマラソンについて具体的なことは何も述べていなかった。しかし、今はインターネットでケニア選手や五輪連覇中のE・キプチョゲのトレー二ング法なども公開されている。マラソンの指導者が真剣に学ぶ気があれば情報は皆無ではない。

 野口を育てた藤田信之氏も「永山監督のお願いはおかしいですよ」といってこう続ける。

「マラソンでも福士加代子を世界陸上や五輪に連れて行った指導者が何を言っているのか。昔からマラソンの五輪代表は陸連から何か教えてもらったことなどありませんよ。有森や高橋を指導した小出(義雄)さんや私も自分で勉強したんです。例えば、最低でも2時間15分で走りたいなら40キロの平均ペースからどんな練習をすればいいのか自ずと見えてくる。日頃から2時間17分で走る練習をしていれば、その上を目指すにはどうすればいいかもわかる。指導者自身が国内のトップ狙いで、その目は世界に向いていないのです」

 さらに藤田氏は続ける。

「そもそも陸連が調べたことを聞いても一山に向いているかどうかわらない。選手を強化するのは指導者の仕事。それを陸連に求めるのはお門違いです。トラックの田中希実(24=ニューバランス)は今年、ケニアで合宿を行った。中・長距離王国でケニア選手と走ったことは大きな刺激になったかも知れません。意味があるかはわかりませんが、その気になれば、ケニアに行ったり、記録を出した選手の練習を間近で見たり、実際に話を聞くことだってできるでしょう。自ら汗をかかず、陸連に速くなる練習法を教えて欲しいというのは指導者の怠慢です」

 その通りだ。

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