町田ゼルビア黒田剛監督の「原点」は30年前の1本の電話…プロ1年目でクラブ初のJ1昇格に導く
J2首位のFC町田ゼルビア(東京・町田市)が21日、敵地でのロアッソ熊本戦に3-0で勝利し、3試合を残してクラブ史上初となるJ1昇格を決めた。
昨シーズンまで20年以上に渡って青森山田高サッカー部を率い、常勝軍団を作り上げた黒田剛監督(53歳)が、プロクラブの指導者に転身して1年目で悲願達成である。
「日々、不安と背中合わせだった。毎晩、寝られない日々も続いた。シーズンが始まる前は不安だらけだったし、今シーズンどこまで行けるのか、不安視している方も多かったと思う。でもファン、サポーターの方々の応援があり、家族みたいなチームがブレず、勝利のために尽力してくれた」
遠いアウェーの地に訪れたサポーターに向け、涙目になりながら拡声器でこう話した黒田監督。「不安視されている方も多かったと思う」という部分は、まさに本音中のホンネだろう。
日本サッカーの歴史の中で「高校サッカーの監督」から「ダイレクトにプロの監督」に転身した例は初とあって「高校生の指導者風情がプロのステージで何ができるというのか?」「名将とチヤホヤされて思い上がっているのでは?」と誹謗中傷にさらされたからだ。
黒田監督をよく知るサッカー関係者がこう言う。
「確かにプロの修羅場はくぐっていないが、高校サッカーならではの『負ければ終わり』のトーナメント方式の大会などで身についた勝負強さは並外れたものがあり、それはプロの現場でも生きた。試合内容よりも徹底して勝利に拘ることを全面に押し出し、就任当初から『勝つためには守り切ることが必要不可欠』と選手に意識改革を促し、華麗なパスワークよりも泥くさいプレーを奨励。青森山田高時代から武器にしていたロングスロー戦法も迷うことなく導入した。対戦相手からも、アマチュアじみたことをやってまで勝ちたいのかなどとボロクソに言われたが、『ルールとして問題なし。勝つためには何でも取り入れる。それの何が悪いのか』と、いい意味で開き直って取り入れことも好成績に繋がった」