野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…
野村監督に監督室に呼ばれたことがある。
「おまえは真剣にプレーしているか? 何か不平不満を持っているようにしか見えない。何か言いたいことがあるんじゃないか? ここには俺とおまえしかいないんだから、正直に言ってみろ」
言われた通り、不満があるから、あえてやらないこともあった。ただ、全部ブチまけたら大変なことになる。正直になんて言えるはずはなかった。
野村監督には「三流は無視、二流は称賛、一流は非難」という有名な方針がある。今思えば「一流」になれる素材だから非難されたのかもしれないが、当時はとてもそうは思えなかった。
野村監督は選手のポジションや打順を実に細かく考えていた。よく使っていた言葉に「適材適所」がある。感情が入るため難しいのだが、僕が指導者として生かしたい言葉でもある。例えば一般企業でも、営業に向いている人が事務の仕事に就いていては、能力が発揮できないだろう。
野村監督就任1年目、前回も触れたキャンプ初日の話だ。「全員でミーティングをやるから、二軍も毎日来い」と招集がかかった。当時の一軍の宿舎は土佐ロイヤルホテルで、二軍は安芸市内。バスで往復1時間の距離があったこともあり、岡田彰布二軍監督はこう言って突っぱねたのだ。
「二軍はアタマ使うより練習させなアカンのとちゃいますか?」
野村監督は「ワシの話を聞けんのか」と激怒し、結局、二軍選手もミーティングに参加することになったものの、誰も頭が上がらなかった野村監督に、岡田二軍監督だけはこびることがなかった。