星野監督1年目…周囲から浮いても関係ない「今岡は変わった」と思わせたくてアップから全力だった
「好きなようにさしたるから、やってみろ」
春のキャンプイン直前、就任1年目の星野仙一監督に言われた言葉は、野村克也前監督のID野球にウンザリしていた僕にとってうれしいものだった。ただ、同時に恐怖というか、背筋に衝撃が走るものでもあった。
全ては自己責任。結果が出なければ、プロ野球選手として終わるだけ。その事実と向き合った時、恥も外聞も捨て、星野監督にアピールしないといけないと思った。
それはグラウンドに出た瞬間から始まる。朝の挨拶からウオーミングアップも声を張り上げて全力である。アップは体を起こすために軽めに行う選手が多い中、僕だけが全力。明らかに浮いていたが関係ない。キャンプで一軍の全首脳陣が揃うのはアップの時だけ。周囲に「今岡は変わった」と思わせたかった。
キャンプでは後にも先にも「野球人生で一番」というほどバットを振りまくった。キャンプ中「俺は今年、今岡に期待している。でも今年アカンかったら、あいつは終わりや」という星野監督のコメントを見た。うれしいと同時に背筋も伸びた。