フランスで120万部、世界39カ国で翻訳出版 作家D・フェンキノス氏に聞く
邦題は「ナタリー」だが原作のタイトルは「la delicatesse」、つまり、デリカシーである。繊細な、洗練された、思いやりのある、脆弱(ぜいじゃく)なマルキュスが持っているのがデリカシーなのだ。
「なぜ、こんなに売れたのかって、よく聞かれます。ここまで来ると正直、よくわかりませんが、ひとつの理由としてタイトルがあげられると思います。本が出た頃は世界金融危機が襲いかかり、大変な時期でした。人々は和みや優しさを求めていた背景があります。いまもフランスは何というか、野蛮になっている。世界中で競争が激しくなり、みんなが自分のことばかり考えている。デリカシーとは心遣いです。相手を居心地よくさせ、そうした時間をゆっくり味わってもらう。今は物事の流れが速すぎて、味わう時間がなさすぎますね」
なるほど、だとすれば、この小説が多くの人の心に染み渡っていったのはうなずける。DVDの主演はオドレイ・トトゥ。超売れっ子の女優だ。
「強さ、かわいさを併せ持っている。彼女でなければ映画はダメだと思いましたが、初めて作った映画に彼女が出てくれるなんて信じられませんでした」