フランスで120万部、世界39カ国で翻訳出版 作家D・フェンキノス氏に聞く

公開日: 更新日:

 強いオンナだ。しかし、心はどこかに「癒やし」を求めていたのか、ある日、“事件”が起こる。彼女の部下で、誰も関心を持たないような、うだつの上がらない男性、マルキュスにナタリーはいきなり、キスをするのだ。それもオフィスで。さしたる理由もなく、唐突に!

「この小説は、最初にひとりの女性が男性にキスをするシーンがパッと頭に浮かんだんです。その後、それはどんな女性なのか。男性は? なぜキスを? と考えた。キスシーンからフラッシュバックするようにナタリーの過去を書きました。マトリョーシカのように最初は小さな人形でしたが、それをだんだん、大きくしていった感じです」
 こういうフェンキノス氏の脳裏にひらめいたキスシーンとは「自分でも分からないのにキスしてしまう。理解不能、不可解なシーンだ」という。

 肉体的で、衝動的で、生理的で、理性的ではない行動。それによって、鉄のように閉ざされていた女性の心が溶けていくのが面白い。

「我々が魅せられるのは理性的なことじゃないのです。この物語は最初は悲劇的ですが、その後、ナタリーは読者が予想もしなかった人物と恋に落ちる。マルキュスの人柄によって悲劇的な物語が喜劇になっていくのです。大事なのは深刻なことを書いていても、本はやっぱり、楽しいものであるということです。私にとって、面白い、笑えるということと文学的な価値が高いということは決して相反することではありません」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動