フランスで120万部、世界39カ国で翻訳出版 作家D・フェンキノス氏に聞く

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 強いオンナだ。しかし、心はどこかに「癒やし」を求めていたのか、ある日、“事件”が起こる。彼女の部下で、誰も関心を持たないような、うだつの上がらない男性、マルキュスにナタリーはいきなり、キスをするのだ。それもオフィスで。さしたる理由もなく、唐突に!

「この小説は、最初にひとりの女性が男性にキスをするシーンがパッと頭に浮かんだんです。その後、それはどんな女性なのか。男性は? なぜキスを? と考えた。キスシーンからフラッシュバックするようにナタリーの過去を書きました。マトリョーシカのように最初は小さな人形でしたが、それをだんだん、大きくしていった感じです」
 こういうフェンキノス氏の脳裏にひらめいたキスシーンとは「自分でも分からないのにキスしてしまう。理解不能、不可解なシーンだ」という。

 肉体的で、衝動的で、生理的で、理性的ではない行動。それによって、鉄のように閉ざされていた女性の心が溶けていくのが面白い。

「我々が魅せられるのは理性的なことじゃないのです。この物語は最初は悲劇的ですが、その後、ナタリーは読者が予想もしなかった人物と恋に落ちる。マルキュスの人柄によって悲劇的な物語が喜劇になっていくのです。大事なのは深刻なことを書いていても、本はやっぱり、楽しいものであるということです。私にとって、面白い、笑えるということと文学的な価値が高いということは決して相反することではありません」

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