「京都の喫茶店」木村衣有子著
■一度は訪ねてみたい京都のお薦め喫茶店
チェーン店の進出とカフェブームに押され、昔ながらの喫茶店はすっかり影が薄い存在になってしまったが、京都の町には今も喫茶店文化が息づいている。本書は、そんな京都の喫茶店の名店15店を紹介するビジュアル・エッセー。それぞれの店のこだわりや店主のコーヒー哲学、積み重ねられてきた歴史をつづる。
いまや観光スポットのひとつにもなっている「イノダコーヒ本店」の創業は昭和22年。カップに描かれた「向かい獅子」やコーヒー缶の「豆を運ぶロバの男」の絵は画家でもあった創業者の猪田七郎氏の筆による。今も昔も、朝7時の開店と同時に常連客はもちろん、ガイドブックを手にして一日の旅をここからスタートさせる観光客で客席がいっぱいになる。
そのイノダよりもさらに古く、昭和5年開業の「進々堂」では、木漆作家の黒田辰秋が開業に合わせ同店のために制作したテーブルと椅子がいまだに大切に使われている。著者によると「当時はそれまで見たこともないような新しさに驚かされる店だったのが、今では、いつきても変わらないね、というのが『進々堂』への褒め言葉となっている」という。