「シモネッタのどこまでいっても男と女」田丸公美子氏
■「夫婦は“割れ鍋にとじぶた”。諦念の境地で耐えるしかないわね」
“シモネッタ”とは、ハイレベルの下ネタを繰り出す著者に、ロシア語通訳の第一人者で親友の故・米原万里氏が授けたニックネーム。軽妙な語り口にファンの多いエッセー「シモネッタ」シリーズの最新作となる本書では、“これまで極力秘してきた”という夫とのなれそめなどがつまびらかにされている。
「編集者の口車に乗せられて、小説現代に原稿用紙2枚程度で連載していたのが始まり。夫には内緒で書いていたのよ。月刊雑誌だし、読み捨ててもらえると思って。なのに本になって残っちゃった。夫はそこで初めて内容を読んで、機嫌が悪くなっていたわね(笑い)」
結婚のきっかけは1974年の8月、イタリア語通訳をしていた著者が、疲労から腎盂(じんう)炎を発症したことだった。暑い部屋で寝込んでいた彼女を病院に連れていき、クーラーのある自宅に“お持ち帰り”したのが、当時ビジネスレターの翻訳に通っていた会社の上司だった夫だ。
「なぜ結婚したかと聞かれれば、“暑かったから”ね。夫はこの後会社を辞めて、次々に奇抜なアイデアを事業にしては失敗して、お金を払うのは私。友人に職業を尋ねられると、“組紐(くみひも)学園の理事をしています。なんせ、クミコのヒモですから”と言って大笑いしてるんです。お金は出すけど皮肉も言う私は、夫から“罵倒(馬頭)観音”と呼ばれながらも、慈愛深く見守っているわ」