「男ともだち」千早茜著

公開日: 更新日:

 京都に住む29歳の神名葵は、最近名前が売れ始めたイラストレーター。恋人の彰人とは同棲中だが、いつしかお互い干渉しない同居人のようになってしまい、既婚者の医者・真司と時々あいびきする生活を続けていた。

 そんなある日、大学時代の先輩・長谷雄と7年ぶりに再会する。「カンナ」「ハセオ」と呼び合い、互いの異性関係もあけすけに話すような男ともだち「ハセオ」は、久しぶりに会ってもすぐに昔のノリで話せる、一番気の許せる相手だった。浮気しても罪悪感もなく、気が向けば誘われた男と寝てすぐに捨ててしまうような生活を送っていた神名にとって、セックスの関係がないハセオこそが、素顔の自分でいられる相手だったことに気付く。

 著者は、「魚」(のちに「魚神」と改題)で小説すばる新人賞と泉鏡花文学賞を受賞し、「あとかた」で島清恋愛文学賞を受賞して直木賞候補となった期待の作家。今年は本作で再び直木賞候補になった。さらりと流れるような文体で、「ともだち」としての男を求める主人公の心模様が丁寧に描かれている。
(文藝春秋 1550円)


【連載】ベストセラー早読み

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…