「酔うために地球はぐるぐるまわってる」椎名誠著
これまで240冊もの本を書いてきた椎名誠にして、初めての全編酒だけのエッセー集。登場する酒の種類は実に多彩。青トウガラシを入れたトマトジュースで割って飲むテキーラ(メキシコ)。馬の乳を革袋に入れて攪拌してつくる馬乳酒(モンゴル)。蒸したイモを唾液と混ぜ合わせて出来上がる口噛み酒(ニューギニア)。焼酎の中にまだ動いているコブラの心臓を入れて飲むコブラ酒(ベトナム)。ココヤシの花芯から出てくる樹液を自然発酵させたヤシ酒(フィリピン)。さらには、本場スコットランドと日本の山崎・白州で味わうシングルモルト・ウイスキー……。
しかし、最も熱い思いで語られるのはビール。「ビールがいつも旅人を助けてくれた」という章にはさまざまなシチュエーションでのビールとの出合いが語られる。炎天下で行われた映画撮影の後、宿に帰って飲む冷えたビール。小説を書き上げた徹夜明けのビール。堤防の突堤で釣り竿を垂らしながら飲むビール…。猛暑の中、本書を読むと、きんと冷えたビールが飲みたくなること必定!
(講談社 1400円)