「後妻業」黒川博行著
91歳になる中瀬耕造は、結婚相談所で知り合った22歳下の小夜子と同居していた。耕造は結婚を望んだが小夜子は籍を入れるのを固辞、内縁の妻に納まった。その耕造が脳梗塞で倒れた。父の危篤の知らせを受け駆けつけた2人の娘は、そこで耕造がほとんどの資産を小夜子に遺贈する公正証書を作成していたことを知る。
疑念を抱いた姉妹は弁護士に相談。弁護士から小夜子の身辺調査を依頼された興信所の調査員・本多は元大阪府警の刑事。不祥事を起こして警察を辞め、今は探偵稼業で禄を食んでいた。
本多は、これは小夜子と結婚相談所の経営者・柏木とが手を組んだ「後妻業」だと見抜く。結婚紹介所に登録した資産家の独居老人に小夜子が後添いとして入り込み資産を巻き上げるのだ。小夜子は過去にも何人もの老人から財産を詐取し、いずれも不審な死を遂げていた。カネのにおいを嗅ぎつけた本多は、柏木・小夜子を追い詰めて自らもおこぼれにあずかろうとするが……。
悪に染まった人間たちの強欲さと非情な現実を秀抜な筆致で描ききった、直木賞受賞第1作。