「鳶 上空数百メートルを駆ける職人のひみつ」多湖弘明著
通行人が米粒に、走る車がミニカーのように見える街並みを鳥の視点で見下ろしながら、常に死と隣り合わせで働く男たちの天空の仕事場は、一つのミスも許されぬ緊張感に包まれている。
実際に目の前で仲間を失ったこともあるという著者だが、何よりも怖いのはものを落とすことだという。わずかコイン大のナットでさえ、落とせば大惨事は免れぬからだ。
その他、危険を回避するためのさまざまな機能が隠されているという、あの印象的なダボダボのズボンなど「ゴト着」と呼ばれる作業着の秘密や、総重量8キロにもなるという腰に装着する道具の解説まで。
一読すれば、街の工事現場の風景がこれまでと違って見えてくるに違いない。(洋泉社 1500円)