「緋の天空」葉室麟著
天平勝宝4(752)年、聖武天皇の発願によって建立された奈良東大寺の大仏の開眼供養が行われる。3年前に聖武は娘に譲位。孝謙天皇即位の折、皇太后となった光明子は、すべての官庁を従えて国政を行うために紫微中台を設け、甥の藤原仲麻呂を長官にすえた。聖武亡き後、仲麻呂は孝謙を操り、自らの権勢を拡大。見かねた光明子は大安寺の僧正を訪ねる。僧正は、悪臣を誅する呪術を所望する光明子に一人の僧を紹介する。
道鏡と名乗る僧は、光明子が幼いころに出会った弓削清人だった。道鏡と再会した光明子の脳裏にこの世を仏国土に変えると願ってやまなかった若かりし日の思いがよみがえる。聖武を支えた光明皇后の生涯を描く歴史長編。
(集英社 1600円)