「イチョウ 奇跡の2億年史」ピーター・クレイン著、矢野真千子訳

公開日: 更新日:

 2億年前の大昔から、変わらぬ姿で存続してきた奇跡の植物・イチョウ。1億年前に陸上植物の勢力地図が変わったときも、6500万年前に恐竜絶滅が起きた時も、大氷河期を経て絶滅の危機を迎えた時にも、何とか生き延びて今では寺院や神社の境内や世界中の街路を彩る植物として存在している。

 本書は、そんなイチョウの生態を明らかにしながら、そのサバイバルの歴史を物語る。

 イチョウという植物の特徴は、現生する近縁種のいない孤立した種であり、「植物界の生きた化石」的存在であることと、今や人為的に植林されたものがほとんどであることだ。大気汚染にも害虫にも病気にも強く、ギンナンやイチョウ葉のエキスなどの有用性をヒトが見いだしたことが、絶滅寸前までに陥ったイチョウの復活の鍵となった。

 太古の地球の歴史とヒトをつなぐイチョウのサバイバル史は、目先の利潤を求める短期的視点ではなく、地球規模の生き物の営みという悠久の視点を授けてくれる。

(河出書房新社 3500円)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  2. 2

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  3. 3

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  4. 4

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  5. 5

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  1. 6

    おすぎの次はマツコ? 視聴者からは以前から指摘も…「膝に座らされて」フジ元アナ長谷川豊氏の恨み節

  2. 7

    大阪万博を追いかけるジャーナリストが一刀両断「アホな連中が仕切るからおかしなことになっている」

  3. 8

    NHK新朝ドラ「あんぱん」第5回での“タイトル回収”に視聴者歓喜! 橋本環奈「おむすび」は何回目だった?

  4. 9

    歌い続けてくれた事実に感激して初めて泣いた

  5. 10

    フジ第三者委が踏み込んだ“日枝天皇”と安倍元首相の蜜月関係…国葬特番の現場からも「編成権侵害」の声が