「ふたつの星とタイムマシン」畑野智美著
「国道沿いのファミレス」で第23回小説すばる新人賞を受賞し、その後吉川英治文学新人賞候補にもノミネートされた著者による、ちょっと不思議な近未来を描いたSF短編集。大学の教授室で見つけたタイムマシンに乗って中学生の自分に会いに行く女子学生の物語「過去ミライ」、必要に応じて時間を自由に操る能力を持つ中学生が主人公の「自由ジカン」、会社の給湯室から突然別の場所に移動してしまうOLの物語「瞬間イドウ」、家庭用ロボットに家事と学校のスケジュール管理を任せるようになった男子学生の心模様を描いた「恋人ロボット」など計7編が収録されている。
どの短編でも、何げない青春物語の中に忍ばせたSF的要素が違和感なく日常に溶け込んでおり、私たちの知る世界とは違うもうひとつの世界での普通の生活を描いたかのように感じさせる描写が興味深い。お笑いコンビ、キングコングの西野亮廣が描いたカバーイラストも話題を呼んでいる。
(集英社 本体1500円+税)