「詩人の死」正津勉著

公開日: 更新日:

 北村透谷から寺山修司まで、今なお読み継がれる珠玉の詩を残して足早にこの世を去った詩人たちの作品と、その死までの足跡をたどった一冊。

 北村透谷の死の予兆を彼の詩の変化に見いだし、石川啄木の詩に織り込まれた舶来化した言葉の中に絶望しきった悲しさを読み取る。「どうも間もなく死にそうです」とつづった宮沢賢治、「死と私は遊ぶ様になった」と書いた村山槐多、「人はお墓へ入ります」と歌った金子みすゞなど、死という観点から見た詩人の内面についての考察は興味深い。

 著者の姉との交友をきっかけに自身も面識があったという寺山修司とのエピソードは、死をも作品化してしまう詩人の業がうかがい知れる。

 巻末にはあとがき代わりとして、谷川雁を取り上げている。95年まで生きた谷川は早世とはいえないものの、肉体の死の半世紀前に「私の中にあった『瞬間の王』は死んだ」として詩人としての自分を葬っているという指摘には、はっとさせられる。(東洋出版 1600円+税)


【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ダウンタウン浜田雅功の休養でよぎる2023年の「意識障害」報道…「前日のことを全く記憶していない」

  2. 2

    フジテレビ30代アナ永島優美、椿原慶子が辞めて佐々木恭子、西山喜久恵50代アナが居座る深刻

  3. 3

    ダウンタウン浜田雅功が休養でテレビ業界大激震…キー局編成関係者「いずれ番組の打ち切り話が出てくる」

  4. 4

    男性キャディーが人気女子プロ3人と壮絶不倫!文春砲炸裂で関係者は「さらなる写真流出」に戦々恐々

  5. 5

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  1. 6

    井上真央ようやくかなった松本潤への“結婚お断り”宣言 これまで否定できなかった苦しい胸中

  2. 7

    志村けんさん急逝から4年で死後トラブルなし…松本人志と比較される女性関係とカネ払い

  3. 8

    【動画あり】イケイケ国民民主党に“パワハラ問題”噴出!女性衆院議員からの罵倒叱責で体調不良に…4人も離党の異常事態

  4. 9

    “現代の遊女”吉原のソープ嬢はNHK大河ドラマ『べらぼう』をどう見ている? 地元は特需に沸く

  5. 10

    日テレ「さよなら帝国劇場」でわかったテレビ軽視…劇場の階段から放送、伴奏は電子ピアノのみ