薄れかけていた反核への思いを編む
「No Nukes ヒロシマ ナガサキ フクシマ」/「No Nukes ヒロシマ ナガサキ フクシマ」編集部編
「核なき世界」を希求するメッセージ&フォトブック。
広島と長崎に原子爆弾が落とされてから66年後、福島第1原子力発電所事故が発生。ヒロシマ、ナガサキに続き、福島もフクシマになった。作家の重松清氏はカタカナで表記されるとき街は「国境を超え、人類史のスケールでの歴史を背負う」と記す。
被爆者、被災者といった当事者から、学者、音楽家、俳優など、さまざまな立場の27人の反核を訴えるメッセージと写真やアートで構成。
冒頭を飾るのは広島大学・長崎大学・福島大学で学ぶ学生たち。長崎で原爆の語り部から命のバトンを受け継ぎ「平和案内人」のボランティアを務める女子大生や、中学3年の時に被災し、今は故郷・双葉郡の未来のあるべき姿を考える男子学生など。3大学の学生たちは本書の編集にも携わる。
その他、実はヒロシマの前、1945年7月16日にニューメキシコ州の砂漠で人類史上最初の核兵器が使われた事実を伝えながら、核開発継続のために「原子炉」を「発電機」に偽装してきた日米両政府のペテン戦略と技術共有を侮るなと警告する詩人アーサー・ビナード氏や、原爆投下直後の長崎の光景を語る歌手の美輪明宏氏、科学技術の軍事目的への転用について科学者のあるべき姿を考える物理学者益川敏英氏、福島県南相馬市で農業を再開した杉内清繁氏、そして吉永小百合さんや坂本龍一氏など。有名無名を問わず、反核への思いがつづられる。