「科学の危機」金森修著
私的利権など意に介さず、ひたすら真理追究に努力し、国家や宗教、権力に決然と立ち向かう孤高の自由人こそが科学者である――。
そうした「科学の古典的規範」は19世紀、実証主義思想を確立したオーギュスト・コントや、科学と国家の関係などを論じたエルネスト・ルナンらの科学観によって完成した。
しかし、戦時下の原爆の研究など、20世紀に入ると、科学研究と国家の関係などが早くも変質してくる。
本書は古典的規範から逸脱しそうになる科学を批判的な視点から指摘してきた唐木順三、宇井純、高木仁三郎らの功績などを紹介しながら、「科学の科学性」を維持するためにどうすべきかを論じる。(集英社 760円+税)