「日本史の森をゆく」東京大学史料編纂所編
古代から明治維新期までの日本史史料を収集研究する東京大学史料編纂所に所属する研究者によるアンソロジー。
例えば室町時代中後期を生きた中級貴族の山科言国の日記「言国卿記」。原本は、書状などの裏面が再利用された「紙背文書」で、明応4(1495)年のある日の紙には能登の武士が妻として公家の息女を望んでいるので紹介してほしいとあり、これにはある没落貴族からの手紙が使われていた。こうした紙背文書を読み解く妙味を紹介する作品をはじめ、正倉院宝物に残る墨書から、聖武天皇の葬列に使われた純金の仏像の正体を推理した一文など、歴史上の人物から市井の暮らしまで、さまざまなテーマでつづられた42作を収録。
(中央公論新社 800円+税)