「出生前診断」河合蘭氏
出生前診断とは、妊娠中の胎児に病気や障害があるか調べる検査のこと。
「通常の妊婦健診で行われる超音波検査も出生前診断のひとつです。胎児に病気が見つかったら、出産後すぐに投薬や手術ができる分娩施設に転院するなど、本来は治療が目的ですが、病気がわかったことで中絶につながることもある大きな問題を抱えています」
本書は、出生前診断の現状と、ジレンマに悩む人々を徹底的に取材している。
半世紀前から行われている羊水検査は、妊婦のお腹に針を刺すため流産率0.3%とリスクが大きかった。1990年代に導入された母体血清マーカー検査は、妊婦の採血のみで調べられるため、リスクが激減。
だが、確率しかわからず妊婦が混乱したり、世間ではダウン症の子は生まれてはいけないのかと議論にもなり、国は「妊婦に検査の存在を知らせる必要はない」との見解を出した。
「ところが2014年に、母体からの採血で胎児の染色体異常がもっと高い精度でわかる新型出生前診断(NIPT)が、日本でも導入され、大きな話題になりました。絶対に検査を受けようと思っていた人が土壇場でやめたり、その逆だったりと、妊婦さんたちはすごく揺れています」