ヘイトスピーチの醜悪さと「事件簿」を網羅(選者・中川淳一郎)
本書については過去の安田氏の著作「ネットと愛国」の続編的な位置づけになっているため、同作を読み、ネット上で常に展開されるヘイトスピーチを追っかけてきた私からすると既視感はあった。
だが、「韓国人差別なんて……。韓流ドラマ、昔ほどの盛り上がりはないけど私も友達もよく見てるよ」なんて認識が一般には強いだけに、まさか日本でこんな状況が発生していることに気付いていない人も多いだろう。
数々の「事件簿」的なものも事細かにつづられており、ここ数年間のヘイトスピーチの流れを把握するには最適の書である。
「朝鮮人死ね!」などと叫ぶデモの際、安田氏が在日女性に「個人攻撃されなくて、本当によかったよ」と元気づけるために言ったら「なんで……」と言われ、「私ずっと攻撃されてたやん。『死ね』って言われてた」と告げられる場面など、「ヘイトスピーチという娯楽をする者」と「言われる者の苦悩」の意識差を痛切に感じられる。★★(選者・中川淳一郎)