「遊びとムダ」がうらやましい
「仮名」だけ、筆書きの風合いを強調した書体を使用。加えて文字の大きさも、12Qと9ポをページにより使い分け。通常、1冊の中でのQ数とポイントなど単位の混在は避ける。作業が複雑化し、申し送り事項が増え、分業が難しくなるためだ。
用紙関連では、表紙にLKカラー・180キログラム。ツルツルのオモテ面を内側(表2・3)に使用。しかも本文よりも10ミリほど天方向が短く、背に折丁の並びがわずかながらむき出しに。本文は折りごとに用紙を変えてある。裏抜けするほどに薄い写真ページは、写真同士の重なりとキャプションとの絡みが面白い。製本は並製ながら「かがりとじ」。背固めが緩く、さぞ開きやすいかと思いきやさにあらず。表紙の厚みが強めのシナリと堅牢さを本書に与えている。
常識を超えた「贅沢仕様」に不意を突かれる。「図書設計」の意味と意義について、再確認を迫る一冊だ。(YYY PRESS 1600円+税)
▽みやぎ・あずさ 工作舎アートディレクター。1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。