「ナショナリズムの現在」萱野稔人ほか著
5人の論客がいびつな形で高揚しつつある日本の「ナショナリズム」について論じ合った討論集。
左翼陣営は、ネトウヨ(ネット右翼)を「社会から疎外されているかわいそうな人が、国家や民族のような『大いなるもの』に頼ってアイデンティティーを安定させたいだけ」と断定するが、その背後にあるものを見過ごしていると指摘。その背景には成熟社会としての日本の基礎設計がうまくなされていないことに対する不満のはけ口として排他主義が生まれていると読み解く。歴史観と関係なく感情的な反発の延長線上に排他主義としてのナショナリズムが一般化しているとも。
国益すら無視して暴走を始めたナショナリズムとどう向き合うべきかを論じ合う。
(朝日新聞出版 720円+税)