「漂流老人 ホームレス社会」森川すいめい著
ホームレス支援のボランティアを長年続けてきた精神科医が、彼らが置かれた厳しい現実を伝えるドキュメンタリー。
失業して家賃が払えなくなり兄の家に居候中、うつ病を発症した佐々木さんは、兄との口論がきっかけで家を飛び出す。仕事を求めて上京するが、持ち金が尽きて路上生活者になり、雨に打たれて衰弱したところで著者らに出会う。しかし、救急車で搬送された病院で満足に診察をしてもらえず、低体温症で死亡する。
その他、娘夫婦の家庭内暴力を受け、満身創痍で逃げ出してきた女性や、派遣切りで解雇され車いす生活の80代の母親を抱えて路頭に迷う50代の男性など、彼らのケースから現代社会の課題が浮かび上がる。(朝日新聞出版 600円+税)