「鬼の花火師 玉屋市郎兵衛」(上・下)小嵐九八郎著
天明3年の夏、上野国鎌原村の百姓の息子・友之助が浅間山の大焼けを見物するために寺の観音堂の屋根に上ると先客がいた。江戸帰りの生け花の師匠・紀伊だった。大焼けに興奮した紀伊は友之助と交わりながら、江戸の花火の話を聞かせる。
翌朝、浅間山が大噴火し、友之助は祖父母と両親を失い、2歳年下の妹と生き残った村人たちと信州を目指す。友之助は、頭役の男の不正が許せず殺し、わずか14歳にして皆を束ねることになり、やがて皆を率いて一揆に加わる。その後、知り合った破戒僧のつてで江戸の鍵屋にでっちとして潜り込む。
理想の花火を打ち上げるために悪事の限りを尽くした3代目玉屋市郎兵衛を描いた時代エンタメ。(宝島社 各730円+税)