「監察医の涙」上野正彦著
これまで2万体を検視した法医学の権威がつづったドキュメント。
脳梗塞で半身不随になった老妻が浴槽で溺死体で見つかり、献身的に介護してきた夫は睡眠薬自殺を図るが一命を取り留める。介護疲れによる殺人かと思われたが、その妻の手首に残った夫の痕から、溺れさせるために押さえつけたのではなく、引っ張り上げるときにできる手の痕だと分かったという。
その他、重度の障害を持つ我が子と無理心中を図った父親の妻への思い、継父の虐待で亡くなった6歳の男の子の体に残っていた無数の傷痕、そして下宿人の大学生との情事中にくも膜下出血で亡くなった60代の女性など。死の現場から浮かび上がる忘れがたき人間ドラマを紹介する。(ポプラ社 580円+税)