本の散策を容易にする“新発明”
さて、造本的に見ると小口側の「チリ」の寸法が異様に広い。17ミリもある。どうしたことか?
本来チリは本文を保護するために設けられた、表紙の「出っ張り」である。その他、表紙を開く際「指の掛かり」を良くする機能もある。本書の場合、奇異に映る「幅広のチリ」が奏功、堅牢な表紙から独立して、本文部分をソフトカバーの本のように扱うことができる。ページさばきがしやすい。行きつ戻りつ、本の中を彷徨い歩くのにうってつけだ。紙上の散策を容易にする「新発明」として、大型ビジュアル本の標準装備になる日が来るかもしれない。(モ・クシュラ株式会社 2592円)
▽みやぎ・あずさ 工作舎アートディレクター。1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。