「奇跡の出版人古田晁伝」塩澤実信著
古田晁は長野県筑摩地村に生まれた。生家は分限者だったが、放蕩で借金まみれになった父は、アメリカに渡りギャンブル・ハウスで財をなす。東大を卒業した晁は、中学時代からの同級生、臼井吉見にけしかけられて出版社を始めようと考えた。遠縁の森山書店の社長や同郷の岩波書店の創業者に相談したが、文芸書の出版は経営が成り立たないと反対された。失意の晁は他の仕事を模索するが、やはり出版しかないと決意し、父に資金援助を頼んで筑摩書房を起こす。そして1冊目の著者として選んだのが、特高に執筆を禁止されていた中野重治だった。骨太の出版人・古田晁の生涯を描いた一冊。(東洋出版 2400円+税)