「部落解放同盟『糾弾』史」小林健治著
1922(大正11)年、全国水平社は創立大会で「吾々に対し穢多及び特殊部落民等の言行によって侮辱の意志を表示したる時は徹底的糾弾を為す」と決議。その差別表現糾弾の精神は、戦後の部落解放全国委員会、部落解放同盟へと受け継がれてきた。しかし、近年、同盟は部落解放運動の生命線ともいえる「糾弾」にダブルスタンダードを持ち込み、抗議しやすい企業やメディアなどに対してのみ行い、本来の対象である権力への糾弾を回避していると著者は指摘する。
本書は、メディアによる差別表現事件と、それに対する同盟の糾弾の歴史を追いながら、弱体化する同盟が抱える問題の本質と反差別運動再生への道を展望したテキスト。
(筑摩書房 800円+税)