「ヒトでなし」京極夏彦著
子どもを亡くし、妻と別れ、仕事も失った尾田慎吾はあてもなく歩いていて、自殺に失敗した塚本祐子と出会った。慎吾に「死にたいんなら死ねよ」と言われて、祐子は自分が死にたいわけじゃなかったことに気づく。コンビニの軒下でおにぎりを食べようとしたら、慎吾は高校の同級生の荻野に声をかけられた。IT関係の仕事で成功して高級マンションの最上階に住んでいたのに、今は借金に追われる身だという。荻野は祐子が成り金の相続人であることを知り、自分の起死回生の事業に利用しようと考えるが、そのとき、借金取りがドアを叩く。
妻にヒトでなしと言われた男がなぜか人を助けてしまう諧謔(かいぎゃく)小説。
(新潮社 1900円+税)