「黒田日銀 最後の賭け」小野展克著
壮大な社会実験ともいえる日銀の異次元緩和を検証する経済テキスト。
異次元緩和は、通貨の価値を傷つけ、堕落させることに本質があり、円の威厳をおとしめ、人々の希求を円から退けることこそが狙いだという。円が輝きを失うという「期待」が広がれば、消費者は欲望を取り戻し、モノやサービスへの衝動が蘇るのではないか。そんな人々の期待に働きかけるメカニズムを動かす意表を突いたシナリオなのだ。
そうした異次元緩和の意味と背景の分析から、異端の政策といわれるリフレ政策がアベノミクスの看板政策になった理由、黒田総裁の人物像、氏が主導した世界に類例のない金融政策転換の舞台裏、そして「出口」への道筋までを考察する。
(文藝春秋 780円+税)