「格差大国アメリカを追う 日本のゆくえ」中原圭介氏
「アベノミクスはアメリカの政策の後追いでしかなく、このままいけば日本の格差は拡大の一途をたどり、雇用を死守してきた企業の健全な経営も破壊されかねません」
こう警鐘を鳴らす著者は、インフレと金融緩和、自由競争の大義の下でアメリカが陥っている惨状を解説。アベノミクスが今後の日本にもたらす危機を明らかにしている。
「低迷を続ける世界経済の中で、アメリカはGDPなどの経済指標は非常に好調です。ところが、世帯所得別のデータを見てみると、アメリカの経済成長は所得の下位60%の世帯にはほとんど還元されていないことが分かります。対して、上位5%の富裕層の所得の伸び率がもっとも高いという、格差の拡大が顕著になっています」
ひと握りの高所得者だけが豊かになり、庶民の家計は苦しくなるばかり。このような事態を招いた原因のひとつに、インフレ政策が挙げられる。アメリカの消費者物価は、2000年から13年間で35%以上も上がっている。
「一方、名目所得は13年間で2.1%下落。名目所得が下がり物価が上がったわけですから、実質所得の下落は著しい。この13年間で、何と27.6%も下がった計算になります。インフレには2種類あり、消費拡大により物価が上昇していくのが“20世紀型インフレ”ならば、“21世紀型インフレ”は資源価格の高騰によってもたらされるもの。もはや、インフレで経済が良くなるという考え方は実態にそぐわないのです」