貧困層の若者を狙う?安倍政権の徴兵制
安全保障関連法案の成立により、若者たちの間でも注目のキーワードとなったのが“徴兵制”。しかも、貧困層を狙い撃ちにするのではという不安が広がっている。布施祐仁著「経済的徴兵制」(集英社 760円+税)では、すでに水面下で進行している、貧困層の徴兵について徹底解説していく。
安倍首相は、日本が徴兵制になるのではといった国民の懸念や批判に対し、「デマゴーグ(扇動)だということを説明していきたい」と語っていた。また、現代兵器はハイテク化されているため、徴兵制の隊員では役に立たず、徴兵制導入の合理的理由がないとも説明した。
しかし、自衛隊には多くの職種があり、全員がハイテク兵器を扱うわけではない。現に自衛隊には1任期が2~3年の任期制隊員募集制度があり、毎年1万人も採用している。安倍首相の言葉通り素人隊員が役に立たないのであれば、今でも任期制隊員の募集は不要ということではないか。これに加えて、徴兵制を導入しないのならどうやって隊員を確保していくのか、対案がまったく示されていない。
そこで懸念されるのが、貧困層を狙う経済的徴兵制だ。アメリカ軍ではイラク等での戦死者増大で隊員不足が顕著となり、前科者にまで採用枠を広げていた。しかし、景気の悪化で隊員不足は一気に解消した。貧困層の若者が大学進学のため、あるいは医療保険を手に入れるため、やむなく軍に志願したからだ。すでに自衛隊でも同じ動きがあり、高校新卒者の自衛隊2士入隊率上位15道県のうち、10道県が貧困率で上位15位までに入っている。
派遣労働者を増やして貧富の差を広げる労働者派遣法の改定など、経済的徴兵制の下地づくりは着々と進んでいるようにもみえる。憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使を容認した安倍政権が、憲法解釈を理由に“徴兵制はない”などと言っても、説得力はゼロなのだ。