高校生の政治的活動が禁止された「69通達」の問題点
2016年夏の参院選から、選挙権年齢が18歳以上に引き下げられることとなった。これに伴い注目を浴びているのが、「69通達」。1969年10月31日に文部省(当時)によって出された、高校生の政治的活動を原則禁止にした通達だ。
久保友仁、小川杏奈、清水花梨編著「問う! 高校生の政治活動禁止」(社会批評社 1800円+税)では、18歳選挙権の実施に逆行する、発出から46年が経過した69通達の問題点と今後について考察している。
1969年1月の東大闘争に象徴される学園闘争は、大学だけにとどまらず高校にも広がりを見せた。バリケード封鎖や教師の糾弾、卒業式紛糾などにより、逮捕者や退学処分者も乱発した。そこで文部省より全国の高校に通達されたのが、「高等学校における政治的教養と政治的活動」について述べられた69通達。“国家・社会としては未成年者が政治的活動を行うことを期待していないし、むしろ行わないよう要請している”として発出されたのだ。
以降、高校生の政治活動は好ましくないという意識が教育現場に定着する。生徒が署名運動を行ったり、政治的問題に関するイベントを開催することをよしとしない風潮となったのだ。そして、69通達は学園闘争という特殊な状況下で作られた過去の遺物と思いきや、今日も生き続けていることに驚かされる。2004年、宮崎県の高校ではイラク戦争に対する校内での反戦署名が禁止された。3.11以降、生徒が文化祭などで脱原発について取り上げようとしても、政治的行動として教師から難色を示されるケースも少なくないと本書。
文科省は先月、69通達を改正。高校生の政治的活動の全面禁止を見直しながらも、無制限に認められるものではないとクギを刺した。自由な政治的活動を禁止して考える力を奪いながら、選挙権だけを与える現政権のやり方に、疑問を感じざるを得ない。