「チューリップ」ダシール・ハメット著、小鷹信光訳
いつものように目覚めたマーガレットは、階下に下りて黒ずくめの男が台所から出ようとしているのに気づいた。男は留守の夫ガイに、レオニダス・ドウカスがホテルで待っていると伝えろと言って去った。マーガレットの友人は、悪事のかぎりをつくしているならず者の夫をもった彼女に同情していたが、彼女は夫の金色に光る勇気と強靱が、あらゆる犯罪を責めるべきでない悪事に変えると、むしろ誇りをもっていた。ガイは6日後に帰ってきたが、ドウカスに脅される夫を見て、マーガレットの心のなかに変化が……。(「ならず者の妻」)
1920年代の犯罪小説や、遺作となった表題作など10編の短編。(草思社 2200円+税)