「おかしなことに」勝目梓著
純文学からエロスとバイオレンスを得意とするエンターテインメント作家に転向して人気となり、自身をモデルにした「小説家」でも反響を呼んだ著者が、現役生活41年目に挑戦した「大人の童話集」。オーナーのユメコさんとバーテンダーのノボルくんの仲むつまじい日々と、愛し合うがゆえの結末を描いた「ユメコさんとノボルちゃん」、さまざまな人の手に渡る一枚の絵を巡る物語「人形の絵」、戦時中に未亡人だらけの村に迷い込んだ青年を描いた「カワムラ青年」、愛する人を失った女とその女を支えようとする男を描いた「湖」、大雪で立ち往生した出張先の山奥でひとりの女と出会う男の物語「雪女」など6編が収録。
表題作「おかしなことに」は、初体験の相手から手ほどきされた一風変わったセックスが中年になってよみがえり、困惑する中年男の物語。性に真っすぐ入り込む男女が奏でる物語は、真面目であればあるほどユーモラスでホラーになっていくのが面白い。
(講談社 1600円+税)