「死はこわくない」立花隆著
がんと心臓の手術を体験し、近年は老いの進行を強く感じるという“知の巨人”が死について語る。
中学生のとき、毎朝挨拶を交わしていた隣家のお婆さんの臨終に立ち会ったのを機に、死を意識し始めたという。
20年前に臨死体験に関する著作を発表し、一昨年にはさらに最新の研究成果を取材。その取材を通じ、臨死体験とは、死後の世界を垣間見ることではなく、死の直前に衰弱した脳が見る「夢」に近い現象であることを科学的に明らかにした。その取材を通じ、死は夢の世界に入っていくのに近い体験なのだから、いい夢を見ようという気持ちで人間は死んでいくことができるのではないかと考えるようになり、死がそれほど怖くなくなったという。(文藝春秋 1000円+税)